マオが、ススキの原っぱに入った。
 ザワザワ・ザワザワ
 ザザー・ザザー
 波の音を大きくしたような音がする。
 そうだ、ここは、ススキの海なんだ。
 ふわふわした穂は、波なんだ。波がお月さまに光る。
(きれいだなあ)
 だけどススキの穂になでられると、くすぐったい。
「こら、くすぐったいじゃないか。もっとふつうの道を通ってくれよ」
 ぼくは、もんくを言った。
 だけど、マオは、すました顔をしてずんずん進んで行く。
 原っぱを通りぬけたあたりから、ヒゲをよこにピンとはり、耳をすこしうしろにたおして歩いている。
 家からずいぶんはなれたところに来てしまった。
 マオのきんちょうが、ぼくにもつたわってきて、そうすると、心ぞうがドキドキしてきた。
 ねえ、マオ、どこに行くの?
 まいごにならない?
 ここをもうすこし行くと、広い道路があるんだよ。知ってる?
 しんぱいになってきて、心の中でよびかけた。
 すると、まるで聞こえていたかのように
 ニャア
 と、答えた。
 マオには、ぼくのかんがえていることが、わかるのかもしれない。だって、ぼくは、マオのしっぽなんだもの。

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