佐和山も、晩秋です。
今年は――
春先の低温と夏の猛暑で
農作物の生育に影響が出て
米の作柄はいまいち。
果物類も、小振りのものが目立ちます。
それでも――
ようやく、収穫期を無事に終えて
殿のもとにも今年の実りが届きました。
「この篭には、柿は入っていませんから安心して召し上がれますよ」
左近の準備した果物篭から、殿は青リンゴを取り出しました。
(殿のために葡萄を用意したのだけど…)
なんてことを神(私)が思っているのは、内緒です。
「この冬は、晴れる日が多いですかね?」
「穏やかな冬晴れが続くとよいのだが…」
領民の安定した生活を願う佐和山主従でありました。